ピンクの象が

人生に行き詰っているそうで

相談にやってきた

大きな大きなピンクの塊

目はつぶらで澄んでいるけど

光がなくて

もう疲れましたよ

そうポツリ

ぼくは何にも言えず

うんうんとうなづくばかり

清く正しく

明るく素直に

生きたいのですが

ピンクの象

ただそれだけで

どこに行っても

みんな笑うんです

うんうんとぼくは

うなづくばかり

昔は宇宙飛行士になりたかったですが

これにはぼくも吹き出したが

ピンクの象もころころと笑って

笑い声もかわいいのだ

いまは無職です

妻にも逃げられました

妻は七色の人魚でした

ポロリとピンクの象の眼から

涙が落ちて

それは大変でしたね

そういうのが精いっぱいのぼく

とうとうピンクの象は

ぶるぶる体を震わせて

泣きだして

こちらももらい泣きして

号泣

人生相談など

ぼくの柄ではないのだ

かくいうぼくは

無色透明な陸のイルカなので